いちかわの著書紹介
筆者のコメント

Novel/市川創士郎
Illustration/折詰田如意三
新書版/324ページ
定価/本体860円+税
豪華カラー口絵付き
辰巳出版ネオ・ノベルズ


     ↑
これは、台湾版の表紙
幸福仮面の大作戦!?〜ファスネイティング・トラブル〜
 大学1年生の牧本和樹は、もうすぐ二十歳になるというのに未だに恋人と呼べる彼女がいない。当然のごとく童貞。そんな彼が、不思議な老人がくれたマスクを装着すると……という感じの話。これだけでも、恐らくどんなモノか分かってもらえるだろう(笑)
 まぁ、女子大生、女子高生(←大人しいメガネっ娘と元気印の二人。もちろん、あれな関係(*^^*))、タカビーな美人社長、そして幼なじみの女の子と、お約束なキャラクターは一通り網羅していると思う。さすがにメイドや看護婦は無理だったので、代わりに美人秘書をちょこっと出した(^^;;;
 実は、原稿を書き始めたのは1997年7月なので、発売まで1年3ヶ月も要した計算になる。別に俺の執筆速度が遅かったわけではなく(←早かったわけでもないが(笑))、色々と複雑な事情があったのだ。いささか時間がかかりすぎた気もするが、とにもかくにも無事に発売までこぎ着けられて良かったよ。
 さて、本書のタイトルだが、もともと正式タイトル候補として「幸福仮面の大作戦?」を提示していた。しかし、相談の結果「これは副題にしましょう」ということになって、メインタイトル案を改めて考えた末に「ファスネイティング・トラブル」が生まれたのだった。
 ところがどっこい、フタを開けてみたら予想外の大逆転。「!」マークが追加された上で、いつの間にか「幸福仮面の大作戦!?」がメインタイトルに復活していたではないか。どうやら、タイトルロゴのデザインの関係でそうなったようだが、これには作者である俺もちょっと驚いた(^^;;;
 それにしても、こうなったのを改めて見てみると、けっこう恥ずかしいタイトルだな(^o^;;;(←自分で言うな)
 イラストを描いてくれたのは、漫画家の折詰田如意三氏。サンプルで氏の絵を見た瞬間に惚れ込んで、編集氏に交渉を依頼。紆余曲折はあったものの、どうにかイラストを担当してもらえることになった。
 本編中のモノクロイラストについては、折詰田氏は鉛筆による下書きをせず、ラフ画を透過させながら色鉛筆と薄墨だけを使って描いたそうだ。確かに、普通のペンで描いたのとは違う独特の雰囲気が出ており、なかなか良い感じである。この方法は、線が少しでも狂うと全部描き直しになるため、かなりの力量が求められるはず。折詰田氏の力作の数々を、是非とも堪能してもらいたいと思う。すんげーエッチだけど(^^;;;
 なお、この表紙には、折詰田氏の発案でちょっとした罠が仕掛けられているのだが、それは買って確認して欲しい(^^;(←買わなくても分かると思うが(笑)) 
 ところで、BugBug1998年12月号でプレゼントの対象になっていたけど、希望する人いたのかな?(^^;;;

1999年02月13日(土)
 過日、新作の打ち合わせをした際に、「幸福仮面」に届いたアンケート葉書を見せてもらった。
 正確な統計は取っていないが、意外なことに一番人気のキャラクターは美人社長の定岡朋美だった。俺はてっきり、あずみ&渚の女子高生コンビが双璧で、美夏がそれに続くと思っていたが、フタを開けたらダークホースの朋美の1人勝ち(^^;;; 怜子に人気が出ないのは覚悟の上だったが、朋美にここまで集中するとは……。どうやら、みなさん年上の高飛車女を陥落させる話が好きだったみたいね(笑)

1999年03月04日(木)
 今日、辰巳出版から台湾版の「幸福仮面の大作戦!?」が届いた。あ、タイトルが「幸福假面大作戰」になってる(^^; うーん、「?」がポイントだったのに(^^; なんでも、向こうには「?」に当たる文字がないらしいが、オビにはちゃんと「?」があるぞ?(笑)
 ちなみに、紙質があまり良くないことと、印刷技術がやや劣るせいなのか、絵の画質がやや荒く、オリジナルより少し厚くなっている。値段は170元。日本円にすると……だいたい670円くらいか?(?_?)
 ま、それはともかく、「あずみ」が「東實」になっているのは、かろうじて分かったけど、他の人名とか固有名詞を除くと、プロフィールやあとがきも含めてひとっっっことも読めないぞ(^^;;;(←当たり前だ(笑)) さすがに、プロフィールだけは何が書いてあるか、かろうじて分かるけど、あとがきも読めないと自分の本って気がしないよな(爆)
 ところで、左の画像だと細かくて分からないが、折詰田さんの名前が「如意三」ではなく「如意山」になってる。これも、向こうとの言葉の差らしい。うーん、文化の違いとは面白いものよ(笑)
 ちなみに、向こうではモロに「未満十八歳者不得閲覧」(十八歳未満の人は買っても立ち読みしてもダメよ)扱い。ま、そりゃそーだわな(^^;;;
 左に台湾版の画像を載せたが、文字が潰れてしまった。けど、300dpiのスキャナでは、これ以上の輪郭補正は無理(^^;;;
 それにしても、せっかく折詰田さんが苦労して作ってくれた表紙の罠が、まったく生かされていないでネタバレしまくっているのはちょっと悔しい。

1999年09月15日(水)
 うっかり書き忘れていた。過日、打ち合わせで改めて「幸福仮面」のアンケートを見せてもらったのだが、数枚の追加があった。で、その「お気に入りキャラクター」の欄を見ると、あとから来た葉書は「佐久間美夏」ばっかりだったもんで、いつの間にやら美夏が朋美に追いついてしまった。ここにきて盛り返すとは、さすがヒロイン(笑) しかし、女子高生コンビは全然ダメ。やはり、レズっぽかったのがまずかったのかなぁ?

雑誌紹介:E−LOGiN1998年11月号/PC−Angel1998年12月号/パソコンパラダイス1998年12月号/BugBug1998年12月号
備考:現在は絶版。

Novel/いちかわさとし 他
Cover Illustration/松原健治
Illustration/木原康彦
文庫版/238ページ
定価/本体495円+税

青春出版社
禁断の恐怖〜戦慄のアンソロジー〜
 俺の他、秋月達郎、小川美那子、是方那穂子、早瀬みずち、松井永人、松崎昇、矢島誠の各氏の競演によるアンソロジー小説。
 俺が書いたのは、「ずっと一緒」。なんと、ラストを飾っているのだ(^^)
 この手の本格ホラー小説を書くのは初めてだったし、諸々の事情でさんざん難儀させられた労作である。
 「ずっと一緒」というタイトルは企画投書からずっと一緒(笑)だったのだが、最初はまったく違う純粋なホラー話をやるつもりだった。ところが、担当編集氏の意見で初期案はボツ。その代わりとして提示したのが、サイコホラーの本作である。
 もっとも、サイコホラーってーのは視覚的なものではなく、皮膚感覚で味わう恐怖なだけに、「怖さ」を出すために四苦八苦悪戦苦闘七転八倒してしまい、正直言って死んだ。細部のセリフ1つにもかなり気を使ったし、キャラクターの言葉の端々や態度で恐怖心をかき立てる描写という点で、自分の未熟さを痛感させられたよ。
 また、いったん原稿が出来上がったあとに、イラストの関係で1ページ減らすように言われて、これまたえらい難儀した。
 それに、一部のシーンに関しては、いったん書き上げて原稿を提出したあと、自分で納得できずに編集氏と相談した上で書き直した。こだわりって言うより、この部分をうまく処理しないとストーリー自体がつまらなくなる、という危険性を感じたための処置である。
 とはいえ、そういった苦労をした甲斐もあって、俺としてもそれなりのものができた、という自負は持っている。別に出来の良し悪しじゃないと思うが、読者諸氏の目に触れる確率の高い(と思われる)取りに選ばれたのも、個人的にはプレッシャーでもあり、苦労が報われた気がしたりもする。
 もっとも、せめてあと2ページあればもう少し色々書き込めたのではないか、という思いもあり、その点だけが残念と言えば残念。
 イラストのことは、辰巳出版の本と違ってノータッチなので、深いコメントはできない。ただ、「ずっと一緒」のイラストに限って言うと、まっっっったくエロくないぞ(笑) まさか、あのシーンをイラストにするとはねぇ……。ま、いーけど。

 ところで、この「ずっと一緒」というタイトルには元ネタがある。俺自身はプレイしたことはないのだが、ゲームとアクセサリー集で出ていた「ずっといっしょ」というものがそれ。このタイトルの略称「ずっしょ」が気に入っていて、「是非ともこの略称を使いたい(^^;;;」と思っていたのだ。こんな軽薄な理由でタイトルを作った割に、ふさわしい物語を組み立てたんだから、我ながら良くやったと思うよ。
 まぁ、「いっしょ」を漢字にしたこともあるので、ゲームを知っている人でも、恐らく元ネタがそれだとは気付かなかっただろう。

Novel/市川創士郎
Illustration/中北晃二
新書版/308ページ
定価/本体860円+税
豪華カラー口絵+イラスト=30枚
辰巳出版ネオ・ノベルズ

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これは、台湾版の表紙
宇宙海賊ビューティー〜翠髪の天使が舞い降りた日〜
 辰巳出版の、そして市川創士郎の第2作。
 ある日、根岸由宇はビューティーという美少女宇宙人と第三種接近遭遇する。だが、実は彼女は正義の宇宙海賊で、悪の銀河パトロール隊の隊員ローガンに追われていた。由宇は、成り行きで彼女に協力する羽目になる。その協力というのが、精子の提供。つまり、エッチすること(^^;;; でもって、ビューティーと由宇のエッチな日々が始まるのだが……という感じの話。
 とりあえず、SFの皮はかぶっているが、俺自身としてはエンターテイメント・エロ作品(^^;と思っているので、科学的に矛盾していたり、理屈に合わない部分があっても目をつむって欲しい(^^;;; まぁ、話を作るためのアクセントとしてSFチックな要素がある、という程度で考えもらうのが、一番良いのではなかろうか。
 実は執筆当初、プロローグはフィルガーナ号が超空間ミサイルにやられて地球に落ちるシーンだったのだが、編集氏から「もっと早い段階でエッチシーンが欲しい」と言われ、どこを差し替えるか、エッチシーンを入れるとしたらどんな形にするか、さんざん悩んだ挙げ句に、本のような形になった(^^;;; 結果、エピローグとプロローグがつながる形になって、まずまずと思える出来になったものの、俺としては初期バージョンも捨てがたくて、実はちょっぴり今でも悔しかったりする(^^;
 なお、前作「幸福仮面の大作戦!?」では、原則として主人公・和樹のみの視点で物語を進めたが、同じことをやっても仕方がないので、今回は視点をブラす方法を使ってみた。ストーリー上、ビューティーと由宇の視点を描く必要があったんで、ついでに視点をクルクル切り換えよう、とチャレンジしてみたのだが、果たして上手くいったのやら……。
 ちなみに、「翠髪(すいはつ)」というのは、俺と編集氏がでっち上げた造語である(^^;;; 辞書を引いても、絶対に載ってない(^o^; 本当は、「緑髪(りょくはつ)の天使」とか「緑の髪の天使」みたいにする案もあったが、「緑髪」は字が固すぎ、「緑の髪の天使」は語感が悪かったため、ギリギリまで悩んだ末に「翠髪の天使」に落ち着いた。
 イラストは、中北晃二さん。当初は、辰巳出版から発売されている漫画雑誌の漫画家からイラストレーターを選考しようとした。が、誰も彼も絵の質がビューティーのイメージと合わずに、マジで困ってしまった。
 なんつーか、俺ってキャラクターの目を見て好みかどうかを判断する癖があって、その俺的な基準に誰も引っかかってくれなかったんだよね。
 で、悩みまくった末に「納得できないけど、この人あたりがいい」と、ムリヤリ何人かの候補者を提示したものの、いずれもスケジュール等の都合でダメ。もう選ぶ人間がいない、と音をあげかけたとき、編集氏が中北さんの描かれたサンプルを見せてくれて、ピンときてそのままイラストをお願いすることにしたワケ。
 中北さんは、ゲームの絵などもやっていらっしゃるCG使いなので、コンピューターを使うとモノクロでもここまでできる、と言わんばかりに、モノクロのイラストの細部にまで様々な効果を与えている。これが、ちょっとSFタッチな本作にはピッタリだ、と俺は思う。
 残念なことに、ネオノベルズが休刊することになってしまい、あとがきに「必ず出す」と書いた続編は白紙になってしまったが、なんとか別の社で中北さんとのコンビでの復活を目指したいと思っている。とにかく、受け皿がなくちゃ個人の力じゃどーしよーもないもんなぁ……。

2000年04月13日(木)
 本日、「宇宙海賊ビューティー〜翠髪の天使が舞い降りた日〜」の台湾版が届いた。タイトルは、「宇宙海賊貝蒂 翠髪天使降臨之日」である。もちろん、「未満十八歳者不得閲覧」(^^;;;
 しかし、「ビ」と「ー」だけ残ってしまったのは笑える(笑) タイトルロゴのデザインの関係上、漢字だけでは雰囲気が出ないから残したんだろうけど。
 なお、左の画像は、中北晃二さんのホームページに載っていたものをコピーし、加工したもの。
 いや〜、「幸福仮面」の時も思ったけど、こうなると自分の作品という気がまったくしないぜ(笑)

雑誌紹介:E-Login2000年2月号/PC−Angel2000年3月号/メガストア2000年2月号/パソコンパラダイス2000年3月号
備考:現在は絶版。

Novel/市川創士郎
Illustration/竹村雪秀
新書版/258ページ
定価/本体890円+税

マイクロデザイン出版局
(現キルタイムコミュニケーション)
二次元ドリームノベルズ
人型【doll】
 「宇宙海賊ビューティー」を読んだことがある人なら、このタイトルに見覚えがあるはず。そう、もともと本作は、辰巳出版のネオ・ノベルズから市川創士郎・折詰田如意三コンビで出す予定だったものなのだ。
 本のほうでは、余計な波風を立てないように「大人の事情」とお茶を濁しているが、ぶっちゃけて言えば「ネオ・ノベルズの休刊が急に決まったため、執筆半ばで緊急に出版社を移動せざるを得なくなった」ということ。
 実のところ、年末に「ネオ・ノベルズ休刊」の連絡を受けたとき、原稿は8割方完成していて年明けに渡す予定になっていた。だもんで、「休刊」と言われたときは、ホントにどうしようかと途方に暮れてしまった。だが、2000年に入って早々に、マイクロデザインの担当編集氏から「ウチで出しませんか?」と連絡が来たので、飛びつかせてもらったってワケだな(^^;;; ホントね、この話が来たときは涙を流さんばかりに喜んだもんだ。しかも、「3月末発売予定で」なんて言われたもんで、冗談抜きでビックリしたよ。そんなに早く出せるとは、思わなかったもんでね。
 とにかく、本作執筆開始直後に某御仁のマンション退去騒動に巻き込まれたのを皮切りに、年末付近には次兄の入院とネオ・ノベルズの休刊という大きな出来事が、立て続けに起こった。そして、とどめはゲラチェック中の伯母の死去。執筆中からゲラチェック時まで、事件が起こらない時はなかったという、まさに激動の作品になってしまったよ。
 なお、イラストレーターが折詰田さんから竹村雪秀さんに変わったのは、純粋に折詰田さんのスケジュールが出版スケジュールと合わなかったためである。折詰田さん、ちょうど1月〜3月にかけてはゲームの原画の仕事で、メチャクチャ大変だったらしいんだよね。とにかく、イラストレーターの変更にはそれ以外の理由はないということは、ここで明言しておこう。この件について、余計な詮索や誤解をされたくない。
 また、改めて言うまでもないと思うが、あとがきで「N・O先生」と書いているのは、もちろん折詰田さんのことである。
 本作のストーリーは、謎の老人から「人型の符」を渡された主人公・佐伯真宏が、1ヶ月だけの命を持ち、主人の命令には絶対服従する人型の女の子・ユキナを生み出して、欲望の赴くままえっちぃ三昧な生活(笑)を送る。しかし、そこに秘密組織「薔薇十字団」の影が……という感じ。
 いかん、これは物語の表面だけだな(^^;;; あとがきには、「なんでも言うことを聞く女の子が現れたら人はどんな行動するか?」を考えて書いた、と述べているが、それ以外にもいくつかテーマとなるものを盛り込んでいる。ここらへん、いちいち解説をすると言い訳みたいになるんで書かないが、今回は話がけっこうマジなぶん、「幸福仮面」や「ビューティー」よりもテーマ性を重視したつもりである。「ビューティー」のときにも書いたけど、以前と同じことやっても仕方がないんでね。成功したか否かは読者諸氏の評価にかかっているけど、これからも1作ごとに色々なことに挑戦していきたい。
 ところで、誰も気付かないと悔しいので(^^;書いておくが、この作品は1ページ40字×17行である。普通は16行なのだが、原稿移籍の段階で既にマイクロデザイン側の想定枚数を遥かに上回ってしまったため、1行増やしてもらったのだ。たかが1行、されど1行。この枚数があると、トータルで20ページ近く違ってくる。これに加えて、脱稿後に更なる枚数追加の許可が出て、ようやく今回のような形になったわけだ。総ページ数258ページと書いているが、実は280ページくらいの文量がある。うーん、密かにお買い得になってたりして(笑)
 イラストは、前述の通り竹村雪秀さん。竹村さんに決まるまでには随分と苦労したが、拙作の前に二次元ドリームノベルズで発売されていた「はぴねす☆どれいん」の挿し絵をなさっており、実力もスピードも申し分ないことが分かっていたので、お願いすることにした。
 もちろん、折詰田さんとは違うタッチの絵ではあるが、ちょっとシリアスな雰囲気の本作に竹村さんの絵は良く馴染んでいると思う。あとがきにも書いたとおり、ピンチヒッターみたいな感じになってしまったものの、竹村さんにイラストをお願いできて良かったと思っている。
 なお、左の表紙画像だが、イメージスキャナが使えなかったため、マイクロデザイン出版局のホームページから転載させてもらった。

雑誌紹介:メガストア2000年5月号/PC−Angel2000年6月号/パソパラチャット2000年6月号/ パソコンパラダイス2000年6月号
/BugBug2000年6月号(プレゼント)/お宝ネット大百科

Novel/市川創士郎
Illustration/紺野あずれ
新書版/240ページ
定価/本体890円+税

マイクロデザイン出版局
(現キルタイムコミュニケーション)

二次元ドリームノベルズ
へる あんど へぶん
 市川創士郎の第4作目にして、21世紀最初の出版物となった。
 「ぼくの巫女神さま」のシナリオ執筆に手こずって、本来なら昨年中に出して「巫女神さま」と相乗効果を、なーんて考えていた甘い計画はあっさり頓挫した(笑) もっとも、執筆から出版までは、俺が考えていた以上に早く進行してくれたので、これは非常にありがたかったけど。「人型-doll-」が受難の末の出版だったことを考えると、ウソみたいに順調だったね。
 この作品の企画当初、俺は「市川はどこまでバカになれるか?」ということを考えていた(^^;;; つまり、前作「人型」とは反対に、とことん明るくお気楽エッチな作品にすることを目指していたんだ。しかし、そうそう思い通りにいかないのが世の常ってもんでね。結果、本編のような形になった。まぁ、これはこれで良かったと思うけど。
 とにかく、テーマとかなんとか小難しいことはあまり考えず、どちらかと言うとノリ重視で書いてみたんだが、直前まで「巫女神さま」をやっていたため、萌葱やら葵やら藍やらのキャラクターイメージが抜けなくて、けっこう苦労していたりする(^^;;;
 それにしても、「巫女神さま」では巫女さん、本作ではメイド服とセーラー服って、2000年の仕事は制服フェチ的な作品ばっかりになっちゃったな(^^;;; 特に、意識したワケじゃないんだけどねぇ。
 元ネタは、1つの肉体を共有する天使と悪魔が入れ替わり立ち替わり……って漫画のアニメ化されたヤツ。あれのアニメを見ていて、フッと「悪魔みたいな天使と、天使みたいな悪魔がいたら面白いかも」と思ったのが、本作を考えるキッカケになった。
 ちなみに、第4章だけが異常に長いというバランスの悪さは、プロット段階から狙っていたこと。これまで、けっこう章ごとの枚数のバランスを取ることを考えていたため、たまには章バランスを崩してみよう、と考えて挑戦してみた。まぁ、第4章はストーリー的に1つの流れがあるから、無理に章を切るよりは結果として良かった、と思うんだけどね。
 イラストは、本作が商業デビューとなる紺野あずれさん。と言っても、今回はほぼお任せなので、俺からコメントすることはほとんどない。まぁ、早い段階でキャラクターのラフなどを見せていただけたので、イメージの違いなどを事前に補正できたのは良かった。とにもかくにも、予定通りに発売されたのは、紺野さんがきっちり仕事をしてくれたおかげなので、感謝感謝(^^)
 なお、左の表紙画像は、マイクロデザイン出版局のホームページから転載させてもらった。

雑誌紹介:PC−Angel2001年4月号/パソコンパラダイス2001年4月号/BugBug2001年4月号(プレゼント)

Novel/市川創士郎
Illustration/沼泥正
新書版/233ページ
定価/本体890円+税

マイクロデザイン出版局
(現キルタイムコミュニケーション)

二次元ドリームノベルズ
鬼姫
 マイクロデザインの第3作目。
 まさか、先に原稿を書いた「聖獣学園BEAST」より早く発売されるとは思わなかった。発売日の都合で、順番は市川創士郎5作目ということにしたが、俺的にはこっちは6作目って気分。
 正直、最後のほうは綱渡りで仕上げたので、自分のポリシーに若干反してしまったところもあるのだが、そのぶんエッチシーンには力を入れたつもり(^^;;;
 それにしても、「へる あんど へぶん」でちょっぴり洋風のお気楽な路線をやったかと思えば、今度は和風伝奇系の暗い作品を書くという……我ながら、つくづく節操がないよな(^^;;; ま、それも俺の売りなんだけどさ。
 この作品に関しては、単独ヒロインで様々なエッチを描くことを意識した。まぁ、拓海の視点で由香のエッチを描いているが、これも実際の相手は紅葉だし、エッチ担当は紅葉一人と見なしていいだろう(^^;;; 「聖獣学園BEAST」のあとに書いたので、ヒロインをいじめることにも抵抗がなかったし(笑)
 ちなみに、あとがきにも書いたが、この元ネタ自体は20年以上も前から考えていた。で、どうしてこの段階まで形にしなかったかというと、実は俺が考えていたのによく似た、鬼を扱った漫画が某月刊誌で2001年の頭まで連載されていたため。あれが続いている間は、さすがにちょっとこれを書く気にならなかったのだが、10年近い連載が終了したのでようやく出番が来た、と思ったのだ。もちろん、構想の当初はエロなしの企画だったのだが、これはネタ的にエロありでも充分にやれる性質の作品なので、あえてやってみたワケだな。
 この作品については、さすがに20年の蓄積でやりたいネタはいくらでもあるので、エロなしでの復活を企みたいところ。
 なお、本作は通常16行フォーマットのところ、17行で書いている。そうしないと、確実に枚数オーバーして、エッチシーンを1つ丸々削る必要があったからね。今回も、ちょびっとお得だったり(^^;
 あと、今までは、プロローグやエピローグはあっても本編はすべて4章または5章構成でやっていたのだが、本作では初めて3章構成にしてみた。枚数から考えて、今回は3章構成でないと無理だと思ったのだが、3章構成でも通常フォーマットではオーバーしたからなぁ。まぁ、エッチシーンを欲張りすぎたせいだが、結果オーライだろう。
 また、イラストが沼泥正(みぞろただし)さんになった過程については、あとがきに書かなかった裏事情がある。
 もともと、俺が編集氏から提示されていたのは、まったく別の3人の絵描きさんだった。が、提示された3人の絵は、どれも俺の抱く「鬼姫」ワールドのイメージと合わず、正直、困ってしまったのである。そんなとき、そのウチの一人のサイトで、深泥さんの絵がギフトとして貼ってあるのを見かけてピンと来た。
 まさに、あれは直感だったね。「紅葉を書けるのはこの人だ」という確信を、魂で感じたと言ってもいい。そんこんなで、深泥さんのサイトで絵を確認して「絶対いける」と思って、俺のほうから編集氏に逆指名したのである。
 その後、ラフで上がってきたキャラクターデザインを見て(←初見は大阪旅行の最中だった(^^;)、俺はマジで感動したよ。まさに、イメージしたとおりのデザインだったんだもん。
 それに、俺がまったくタッチしてない表紙や裏表紙も満足。特に、裏表紙は暗めの表紙の絵とは一転、本編では描かれることのなかった拓海と由香のデートシーンで、これがまたいい雰囲気なんだなぁ(*^^*) いや、ホントに深泥さんに絵を頼むことができて良かった、とつくづく思う次第。

雑誌紹介:BugBug2001年12月号(プレゼント)/PC−Angel2002年1月号(プレゼントも)/P-Mate2002年1月号(プレゼント)
/テックジャイアン2002年2月号

Novel/市川創士郎
Illustration/やさまたしやみ
新書版/313ページ
定価/本体857円+税

フランス書院
ナポレオンXXノベルズ
聖獣学園BEAST〜美妹クライシス〜
 市川創士郎第6作目にして、若者向けアダルト小説の先駆者でもあるナポレオンシリーズへの初参入作品。ただし、「鬼姫」のところでも書いたが、あっちよりこっちのほうを早く書いているので、俺的にはこっちが第5作って気分である。
 この作品は、獣人化ウィルスというネタを使った、ちょっとSF色(?)の入ったもの。俺の中では、基本的に「宇宙海賊ビューティー」の路線に近いという意識かな?
 2000年の間は、どっちかと言うとラブコメに近い路線の作品を書いていたんで、なんとなくシリアスな話を書きたくなったのだ。で、けっきょくこれと「鬼姫」と、2作連続でシリアス路線に突っ走ってしまった(^^;;;
 俺がこの作品で意識したのは、「自分がどこまで残酷になれるか」ということ。だから、俺の作品としては最も多くの人が死んで血が流れ、(執筆順序で言えば)初めて単独ヒロインが主役以外の男に最後まで陵辱される話になった。
 某有名アニメ監督の「も○○け姫」に関するコメントみたいだが、自分の中にある暴力的かつ残酷な一面を、思い切って前面に押し出して書いたつもり。人間、誰しも破壊衝動みたいなのは持っていると思うし、普段は理性で押さえ込んでいるものをたまに作品内で解放するのは、ある意味で健康的なことだろう(^^;;;
 まぁ、これでも「ぬるい」と言う人が多くいたら、それは俺の暴力性が他者に比べて弱いということになるんで、勘弁してもらいたい。っつーか、この作品の描写をぬるく感じる人がそんなに多くいるほうが、俺としては怖いんだがね(^^;
 ところで、タイトルのセンスが明らかに違うことからも分かってもらえると思うが、このタイトルは俺ではなく編集部で付けたものである。俺も色々と案は考えたのだが、けっきょく先方を納得させられるものを提示できなくて、最後には「お任せします」とサジを投げてしまったのだ(^^;;; あと、章タイトルも俺が付けたものとは違っているし、本編の紹介文なども俺はノータッチ。
 したがって、「どっかで見たことがあるようなタイトルつけてんじゃねーよ」とか「タイトルと中身が違うじゃねーか、ゴルァ(`д´)」などといった俺宛への抗議は、いっさい却下(笑)
 まぁ、このタイトルを最初に見たときは、さすがに俺もちょっとビックリしたよ(^^; 同時に、感心もしたけど。あのストーリーから、「学園」「美妹」という言葉を使おうって発想は、俺にはなかったからね。さすが、官能小説の老舗。目の付け所が違うわ(^o^;
 ちなみに、あとがきにも書いたが、単独でも話は一応は終わらせたものの、ちゃんと続編も作れるように書いてある。が、どうなるかはマジで本の売れ行き次第ってことになるだろう。さてはて……。
 イラストの「やさまたしやみ」さんは、俺もエロゲーマーなので当然、昔から名前は存じ上げていた。お名前を聞いた瞬間に、代表作がすぐに浮かんだくらい。正直、編集氏から「イラストは、やさまた先生でどうでしょうか?」と言われたときは、「俺ごときの作品に、そんな有名な絵描きさんを使っていいの?」とビビッてしまった(^^;
 とにもかくにも、やさまたさんも気合いの入ったイラストを描いてくださったし、絵に関してはデザイン・完成度ともに言うことなし。

雑誌紹介:BugBug2001年12月号(プレゼント)/テックジャイアン2002年1月号/PC−Angel2002年1月号(プレゼントも)
/P-Mate2002年1月号(プレゼント)

Novel/市川創士郎
Illustration/Maruto!
新書版/267ページ
定価/本体848円+税

フランス書院
ナポレオンXXノベルズ
南の島から来た少女
 市川創士郎の第7作目。
 第3章の章タイトルや裏表紙の概要に「育成計画」という言葉が使われていることから、勘のいい人ならピンと来たと思うが、発想の原点は某人気キャラを使ったゲーム「綾○育成計画」である。といっても、ゲーム自体をやったわけではなく、CMで見ただけなのだが。
 実は、「綾○育成計画」のCMを見たとき、「違うキャラクターで育成計画をやってみたら面白いかも」と考えて、頭に浮かんだのが「大○動会」の某野生少女キャラだった。で、企画を編集氏に出したときの仮タイトルが「サクヤ育成計画」で、その影響が最後の最後まで残っていたりするワケなんだな(^^;;;
 とにかく、あとがきに色々書いた通り、本作は「聖獣学園BEAST」から180度方向転換し、複雑な背景などは一切抜いて、ひたすら明るくエッチなノリの作品を書くことと、サクヤと真澄のキャラ萌えな作品(^^;になるように心がけたつもり。したがって、あんまり細かいところを突っ込まないように(^^;;;
 あとがきと言えば、失敗談がある。実は、あとがきの最後のほうで「って、もう行数がほとんど残ってないじゃん」と書いたあと、6ページ目と7ページ目がガッポリ空いている。これは、もともと5ページで終わらせることを前提に書いていたために起きたこと。いや、実際に俺があとがきを書いた時点では、5ページでギリギリ収まっていたんだが、先方がフォーマットを合わせたときにズレてしまったんだな。おそらく、頭の「あとがき」と書いてある部分の余白計算を俺が間違って、こんなことになってしまったのだろう。ちっ、こうなると分かっていたら、もっと書くんだった(。_・☆\(`_´)
 ちなみに、今回は本編のノリに合わせていつもと違う感じのあとがきにしてみたのだが、ああいうのも書いていてけっこう面白かった。まぁ、俺だけが面白がっていても仕方がないんだが、あとがきということで勘弁(^^;;;
 さて、本作のイラストはMaruto!さんにお願いした。担当編集氏からの推薦だったが、サンプルで雑誌の絵を見たとき、すぐサクヤとキャライメージが合ったし、サクヤと真澄のラフを見せたもらったとき、俺の頭の中で小説の絵が完全にMaruto!さんの絵と一致して動き出した。あとがきにも書いたとおり、絵的にはまったく文句なしで満足している。
 ちなみに、色に関しては「見栄えがするように」ということでMaruto!さんにお任せした。したがって、サクヤの髪がピンク色だったり、本編中の文章とイラストの色が違ったりするのは、全て俺も許容済みである(^o^;
 ところで、発売が暑さもたけなわの時期になったため、偶然にも表紙絵が季節に合ったものになったが、本編内の季節は秋から初冬に近い。まぁ、季節感はMaruto!さんも特に意識したわけではなく、「南国少女」というイメージを重視してああなっただけなのだが。しかし、あの表紙を見て「夏の話か」と思って本を手にした人は、本編の季節が違ってちょっと戸惑ったかもしれない。その点だけは、お詫びしておかなくてはm(..)m これは単なる偶然で、狙ったワケじゃないんですわ(^^;;;
 あと、Maruto!さんはけっこうこの仕事にノッてくれて、かなり早い段階で独自の表紙をお遊びで作ってくださった。あまりに出来がよすぎて、担当氏も驚いていたっけ。

雑誌紹介:PC-Angel2002年10月号/P-Mate2002年10月号(プレゼント)/パソコンパラダイス2002年11月号/
TECH GIAN2003年2月号(プレゼント)

Novel/市川智士
Illustration/うのまこと
文庫版/250ページ
定価/684円+税
徳間書店
徳間デュアル文庫


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ウィッチブレイドLOST GENERATION〜碧の少女〜
 市川智士としては、初となる単独著書。ここを読んでいる人には周知のことと思うが、テレビアニメ「ウィッチブレイド」のオリジナルノベライゼーションである。
 どうして俺がノベライズを書くことになったかという点については、少々特殊な事情があったりするので、詳細を書くのは差し控えたい。いずれにせよ、ちょっとした縁があって2006年4月に声をかけていただいたワケよ。俺はアニヲタなので、アメコミ原作の「ウィッチブレイド」というアニメをやることは事前に知っていた。だが、まさか自分がそのノベライズを担当することになろうとは、思いもしなかったよ。
 ただ、その肝心な作品の第1話が、2006年春期の新番組で唯一録画ミスしたものになったのは皮肉としか言いようがない(^^; 担当氏から、すぐにテレビを録画したDVD-Rを送ってもらって事なきを得たけど、一時はマジで焦ったぜ。放送が1週遅いって勘違いしていたから、ミスったこと自体、人から指摘されるまで気づいてなかったし。
 そんな感じでノベライズを書くことが決まって、「漫画とアニメの中間に当たる話」という前提で、まずは打ち合わせ時に叩き台となるプロットを提出。
 実は、この段階のプロットでは優里と似ても似つかない性格の女子大生が主人公だったりした。とにかく、テレビの雅音が23歳の子持ち、漫画の丈流が女子高生ということで、設定が被らないようにしたワケよ。ちなみに2案作ったんだが、ともに女子大生で片や陸上部、片や剣道部って感じだった。また、2つとも話の骨格も「碧の少女」とは違い、ウィッチブレイド装着者になってしまった女性が、そのために様々な事情で恋人の男と戦うことになる、という悲恋を扱っていたんだな。
 だが、これは打ち合わせ時に担当氏から諸々言われた末、構図そのものを却下された。でもって、「ウィッチブレイドという最強武器と装着者に何かギャップが欲しい」と言われて、ブレーン・ストーミングであれこれ案を出し合ったワケだな。その中には、巫女さんブレイドとか(教会の)シスターブレイド(←このネーミングは冗談(^^;)とかいうのもあったんだが、いずれもピンと来なくて悩んだ。まして、「丈流」が寺から始まっているから、神社や教会だと宗教という点でネタが被っていると言われる危険性があるな〜、みたいな思いもあったし。
 そうしていくつか案を出している最中、なんの拍子だったか忘れたが、俺がふと「病弱少女」ということを言ったらしい。「らしい」というのは、俺自身が発言したことを忘れていたから(^^; いやな、ブレーン・ストーミングをしているときは、いちいち自分が何を言っているかなんて俺は考えてないんだよ(^o^; 後から思い返してみると、ナースか何かが話に出て、ゲームの「加奈」がふと脳裏をよぎって口走ったような気もする。
 ただ、「病弱少女」というキーワードをメモして少し話を続けたとき、改めて見た俺の頭の中で閃くものがあり、「病弱少女でやりたい」という旨を担当氏に提案。担当氏も了承して、プロットを作成することになった。
 その後、GONZOにその案が行き、あとがきにも書いたようにトップカウプロダクション側からも、「ヒロインの設定は気に入った」という評価を受けた。
 ところが、ここで俺が出したプロットのクライマックスのネタにトップカウ社からのクレームがつき、この部分だけで延々と1ヶ月近くあれこれと考える羽目になった。
 もっとも、時間がかかったのは返答までに間が空きすぎたってのもあったが。なにせ一番単純な形でも、俺→GONZO担当氏→翻訳作業→トップカウ社という作業が往復で行なわれるんだから(この間に徳間の担当氏が入ることもあった)、時間がかかるのも仕方がないけどな。
 本来、俺自身が自ら英語でプロットを書くといった芸当をできれば時間の節約もできたのだろうが、如何せん俺の語学力は高校時代にすら赤点を取りかけたレベルよ(^^ゞ(←自慢にならん) ちなみに、現在の俺の英語力は、「ニューソルジャー」といった敵のネーミングセンスでも分かってもらえるだろう(^^; ホントは、もっと凝ったネーミングができればと思って、本文を書きながらあれこれ考えていたんだけど、結局何も思いつかず、「ストレートでわかりやすいから、そのままでいいや」ということになった(^o^;
 それはともかく、本文でのクライマックスは新型の巨大な新型爆弾の爆発の影響を阻止するというモノになったものの、本当はまったく違う案を考えていたのである。そこにNGが出てしまったから、一時はどうしようかとマジで頭を抱えたよ。
 ただ、もしも「ウィッチブレイド」が完全に日本のものだったとしたら、俺は第一案のままOKが出たと思っている。まぁ、どういうネタだったかは、すでに本ができた以上は書くのを控えるが、終わった今でも第1案に少しだけ心残りがある。
 そんなこともあって、通常よりハードなスケジュールがさらにきつくなったのだが、影響のなさそうな部分をあらかじめ書き進めるなど手を打っておいたおかげで、執筆全体を通しては比較的順調だった。授業をやりながらだったから大変は大変だったけど、なんとか乗り切ったわね。人間、死ぬ気になればやれるもんだ(^o^;
 エピローグは諸々あって、第1稿から何度か書き直すことになった。最初は、三島と鷹山が知り合いだった、みたいな設定も作っていたのだが、書いてみたらしっくり来なかったり、アニメとの整合性など色々な問題が生じたため、完全に切り離すことになったんだな。おかげで、エピローグの後半が付け足しみたいになってしまった。ここらへんも、ノベライズの難しさだね。
 ちなみに、舞台を沖縄にしたのは、俺が3月に沖縄旅行をしていたから(^^ゞ それに、学生時代には真夏の沖縄に行った経験もあり(日焼けで酷い目に遭った(^^;)、イメージが掴みやすかったという理由もある。あと、都会だと情報の伝達速度が速すぎてウィッチブレイドの隠蔽はほぼ不可能だろうという判断や、沖縄は在日米軍の基地が集中していて今回のような敵を出しやすかった、という事情もあったり。小島まで絞り込んだのは、那覇みたいな都会では沖縄の雰囲気が出しにくいと思ったから(^^;
 ところで、初期発表で小説版に「第1巻」という表記があったが、あれは大いなる間違いだ。本作は、最初から1巻完結で想定して作ってある。おそらく、漫画版と情報が混同されちゃったんだろうな。
 タイトルについては、かなりあとまで(仮)で発表されていた「ウィッチブレイドextended」でいく予定だった。しかし、ロゴの見栄えその他諸々の理由から、急遽変更することになって現在のタイトルになった。
 ちなみに、「碧」を「あお」として使うように提案したのは俺。編集サイドでは当初「蒼」を使うことを考えていたらしい。が、俺は沖縄の海のイメージとして「みどり」とも「あお」とも読める「碧」のほうがいい、と考えてこの漢字を使うことを提案し、了承された次第。
 それにしても、今回は担当編集氏やGONZOの窓口になっていた方にはマジで助けられた。ページの都合もあって、文庫のあとがきでは編集氏への謝辞を削らざるを得なかったものの(承諾済み)、作品は一人の力でできるもんじゃないということを改めて思ったよ。
 なお、本文イラストがないことに不満の人も多いと思う。俺自身も、この点は残念でならない。
 しかし、小説の作業が進行している時点で、うのまことさんはまさに多忙を極め、分単位でスケジュールをこなしている状況だったそうだ。その合間をぬって、かろうじて表紙イラストと口絵を描いてもらえたワケで、これ以上は望めなかったのである。なにしろ、テレビとDVD用の修正とアニメ誌の版権イラスト関係までやっていればねぇ……。
 加えて、こっちの執筆スケジュールにも本文イラストを描いてもらえる余裕などまったくなく、最初から諦めるしかなかったんだわ。
 ただ、個人的には表紙イラストだけでももう少し早めに完成すれば、絵に合わせて優里自身や装着体の容姿などを書き換えることも考えていた。が、イラストに色がついた段階で、もう時間的に大幅な修正が不可能な状況だったのが、ちょっと悔しい。キャンペーンの都合もあって、発売日を絶対に動かせなかったし。
 あ〜、ちなみに表紙をジーッと見て「おや?」と思った人は意外に少ないのだろうか?(^^; ネット上でも、特に話題に出てないようだが。
 俺、ラフの段階で気づいて編集氏に指摘していたんだが、結局そのままトップカウ社のチェックまで1度クリアしてしまったんだよなぁ。その後、少しグチャグチャあって、結局、絵はそのままで本文を若干修正することで決着した。

「ウィッチブレイド丈流」連載終了を受けての補足(ネタバレ注意) 2007年02月21日 記
 2月19日発売の秋田書店「チャンピオンRED」で「ウィッチブレイド丈流」が終了し、翌日には完結の単行本が発売された。これで、日本版「ウィッチブレイド」はひとまずすべて完了したワケだな。
 実は俺、漫画では丈流が暴走して最後の敵がアメリカ第七艦隊になる、という展開を初期の段階で知らされていたんだ。そのあとも、ほぼ俺が知っているとおりの終わり方をしたと言える。
 ちなみに、丈流から切り落とされたウィッチブレイドは海に沈んだワケだが、それが巡り巡って渡座名島で優里の前に姿を現すことになる。
 なお、日本の沿岸近くの太平洋でモノが海に落ちると、海流の関係で沖縄あたりに流れ着く可能性はなくもない。そこらへんは、念のために調べてあったりするのだ(^o^;
 また、この流れをこちらが提示した段階で、漫画のほうでも確実にウィッチブレイドを海に落とす方向にしてくれたみたい(^^; 
 実は、漫画のラストを知った段階で「小説ではウィッチブレイドが海から現れる」という流れを作ったんだ。やや派手な登場にしたのは、小説という絵のない媒体故の変更。一応、理屈づけとしては長いこと海で眠っていたウィッチブレイドが適合者を見つけて目覚めたとき、溜めこんでいたエネルギーを一時的に放出した、ということも考えていたのだが、それは完全に裏設定扱いのこと。
 それにしても、漫画のウィッチブレイドの姿があれほどアニメと違うものとは思わず、最初に見たときはびっくりしたよ。ただ、それを知ったのが、実はすでに小説の本文を書き始めてからだったりする(^^; だって、丈流が完全にウィッチブレイド装着体になった姿の資料を入手できなくて、俺は漫画の単行本第1巻で初めて確認したんだもん(爆) 漫画のデザインは、どちらかというとアメコミ版のイメージに近いよな。
 小説のほうは、うのさんがデザインすることもあって、テレビ版のプロトタイプ的なイメージで考えていたんだが、あらかじめ漫画のデザインを知っていたら、もう少し工夫できた気もしている。
 とにかく、これで漫画→小説→アニメという一連の流れが完成したワケだ。
 ただ、小林靖子さんと一度もお会いできなかったのは残念だわ。せめて、一度お会いしてお礼とお詫びを述べておきたかった。

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